働き方

経理をサボると、ライター廃業に…!?長くライターを続けるための、がんばらない経理講座

儀賀千春

「仕事をこなすことで必死だったけど、そろそろ経理もやらなきゃ…」

ライターを始めて2年。駆け出し時に比べたら単価も上がってきたし、収入も安定してきた。それに伴って、これまで「なんとなく」こなしていた経理に限界を感じるようになった中堅ライターも多いはず。

一方で経理は、「何からはじめたらいいの?」「どこを見直せばいい?」と悩みが尽きない分野でもあります。

そこで今回は、数々のフリーランスの経理をサポートしているお金のプロ・やじけんさんに、中堅ライターが見直すべき視点や考え方を伺いました。

やじけん/コーポレートマネージャー

専門学校簿記課講師、税理士事務所経理主任を経て、資金調達コンサルタント会社で創業・資金調達を支援。現在はスポーツ系ベンチャーにてコーポレート業務全般(財務、経理、労務、人事、採用、総務、法務)を担当する傍ら、フリーランス向けの経理・財務・営業・戦略支援を行う。

中堅ライターが経理を後回しにするリスクとは?

―― 経理に苦手意識を持つライターも多いと思います。管理を怠るとどうなってしまうのでしょうか…。

まず、自分の収益をきちんと管理できていないと、ライターを続けられなくなる可能性がありますよね。

中堅ライターはディレクションや編集など、担当する業務の幅が広がり、「思わぬ出費」が少なくありません。取材で利用する会議室代や交通費、書籍代、AIなどの効率化ツール。何も考えずに支払っていたら、赤字になっていた…なんてこともあるかもしれません。

憧れの仕事ができるチャンスが巡ってきたけれど、報酬を気にせずに受けていたら、赤字になっていたりね。そうなったら、別の仕事で埋め合わせをしないといけません。「なんの仕事をいくらで引き受けるのか」を明確にして持続的に働くためにも、経理の管理は大切です。

―― たしかに、目の前の仕事を引き受けるのに必死で気づかなかったけれど、費用に対して工数が見合わない仕事もあるかも。

そうですね。その結果、資金繰りがうまくいかずに事業を続けられなくなり、夢を手放してしまう方をたくさん見てきました。経理に向き合うことで、自分の適切な単価感や受ける仕事の条件を見直すきっかけにもなると思います。

さらに、経理を後回しにするリスクと言えば、急いで確定申告をした結果、税務手続きに不備があると、税務調査が入って税金を追加で請求される場合があります。取り返しのつかないことにならないよう、しっかり対策していきましょう!

いま自分がやるべきことは? 年収別の税務対策

「年収300万円〜600万未満」は経費を漏れなく計上しよう。青色申告で特別控除も!

―― まず、年収300万未満の場合、どんな対策をすればいいですか?

特別な税金対策をするというよりも、日々の業務で発生する経費を漏れなく計上することが大切です。自宅で仕事をしているなら、家賃や光熱費も経費にできますし、食事の場で仕事の話をすれば飲食代も経費になる可能性があります。

あとは、確定申告で「青色申告」を選択することも必須です。

―― 青色申告って難しいイメージがあるのですが、切り替えなくちゃダメですか…?

たしかに提出書類の内容はちょっと複雑ですが、最大65万円の青色申告特別控除が適用されるのが大きなメリットです。

同じ金額を稼いでも、申告した額に課税される白色申告に対して、青色申告では所得から最大65万円万円を引いた額に課税されるので、圧倒的な節税になるんです。

シンプルな収入と支出だけでなく、資産と負債の増減も記録する必要がありますが、自分の資産状況も把握できるのでオススメですよ。

資産状況がわかれば、引越しやスクールに通うなど、大きな金額を投資するときに「このぐらいは使っていい」という目処が立つので計画も立てやすいです。

――なるほど。そこまで細かく見ていなかったかも。ちなみに、副業からフリーランスに転身する場合、金額の目処はありますか?

本業の給与と同程度か2倍は稼げるようになってから独立するのが安心です。独立したてのフリーランスあるあるなのが、今まで会社に負担してもらっていた税金を自分で支払わなければいけなくなり、生活が立ち行かなくなるというパターンですね。

――たしかに、いつもすでに税金が引かれた給料を受け取っていたので、「こんなに支払ってたの!?」と驚きました。

ただ、税務の観点で見ると、実は会社員をしながら副業を続ける状態が一番お得なんですよ。会社員には、副業で赤字が出たとしても年末に本業の給与で補填できる「損益通算」という制度があります。

本業の給与から補填金額が引かれた結果、税金がかかる所得が減りますよね。そうすると、1年間を通じて毎月支払っていた税金の一部が年末調整で返ってくるんです。

―――結果的に支払う税金が減るんですね!

僕も副業会社員なのでイチオシの働き方ですが、それでも独立したい場合は、お金の心配がなくなるレベルまで自分の事業を育ててから独立するのがいいと思いますね。

―――年収300万円を超えて意識すべきことはありますか?

実は、年収600万円を超えるあたりまでは、年収300万円未満の方と同じように基本的な経費計上を漏れなく行い、青色申告を選択すれば問題ありません

「年収600万」は「チーム化」を。売上を還元し、節税しよう!

――続いて、年収600万の壁を超えたらどうなりますか?

「チーム化」の検討がオススメです。いただいた仕事を分配し、別のライターさんに執筆業務を任せて、自分はディレクションをする立場に回るイメージです。売上を報酬としてライターさんに還元していけば、課税される所得が減って節税につながりますし、受けられる本数が増えて事業が成長する可能性もあります。

―― 安定した金額を稼げるようになった段階で、利用したほうがいい税制度はありますか?

つみたてNISAや小規模企業共済を利用することで、さらに節税できますよ! 2024年から始まった新NISAでは、税金をかけずに投資できる金額が年間40万円から120万円に引き上がりました。投資で得た利益は最大20年間非課税です!

小規模企業共済とは、いわゆるフリーランスのための退職金制度のようなもので、年間最大84万円まで掛けることができるし、全額所得控除もできます。

「年収800万以上」は法人化でしっかり節税。ただし税理士費用も発生!

―― まだまだ先の話になりますが…年収800万を超えたら何をすればいいですか?

法人化を検討しましょう! 

個人で年収800万円を超えてくると、所得税の税率がぐっと上がってきます。そんなとき、法人化して会社から役員報酬としてお給料をもらう形にすれば、その報酬は会社の経費になり、さらに会社員として給与所得控除も使えるように。うまく仕組みを活用すれば、法人化した方が税金の負担を軽くできるケースもあるんです(※詳しくは税理士に相談してみてください。)

―― それはありがたいですね。反対に、法人化のデメリットはありますか?

フリーランスは収入を自由に使えますが、法人化すると難しくなります。法人の収入は会社の資産として扱われ、先述の通り自身の取り分は役員報酬として毎月支給されます。役員報酬の金額は期のはじめに設定し、1年間変更できないので注意が必要です。

―― 仮に報酬を15万円に設定したら、そのなかでやりくりしなくちゃいけないのか…。

加えて、「決算」の義務が発生します。基本的には税理士に依頼することになるため、顧問料や決算対応費などで年間20万円ほどの出費がかかることも。年収に応じてやるべきことが変わるので、将来のビジョンをしっかり描いておくことが大切ですね。

確定申告は大変じゃない? 経理がラクになる習慣

―― ここからは、日々の経理のお悩みについてお聞きしていきたいです。月々の経費や収支の記録が億劫なのですが、ラクにできる方法はありますか?

最初にフローを整えておくこと! 「確定申告が大変」だと言われるのは、1年間の仕訳をまとめて年度末にやろうとするから。毎月、あるいは3か月に一度のペースで仕訳を進める仕組みを作っておけば、意外と負担は小さいです。

まずは、個人事業用のクレジットカードを作って支払いを一本化することから始めるのがおすすめです。現金だと、レシートを1枚ずつ仕訳をして記録しなければいけないけど、面倒ですよね。

―― 写真に撮るのすら億劫ですね…。

それが、クレジットカードと会計ソフトを連携すれば、支払い履歴が自動で仕訳されます。たとえば、カフェで会議をしたときに、支払い記録を「会議費」と登録しておくと、次に同じカフェで支払ったときは自動で会議費に分類されるようになります。月々の支払い先ってあまり変わらないものなので、毎月数クリックだけで経費の記録を終わらせることができますよ。

―― それは便利ですね。おすすめの会計ツールはありますか?

freee』と『マネーフォワード』は、直感的に操作できて使いやすいです。特に『freee』は「はじめてでも安心」というコンセプトなので、初心者でも親しみやすいと思います。『マネーフォワード』はある程度簿記の用語がわかる方に向いています。ニッチなものよりも、使っている人が多いツールを選ぶと、調べて疑問を解決しやすいので安心です。

――なかには、経費を計上していいのか迷うものがあります。判断軸を教えてください。

経費が売上に結びつくものだと一貫性を持って説明できることですね。たとえば、化粧品のレビューをするブログを運営している場合、継続的に収益が発生していれば、化粧品代は経費として認められる可能性が高いです。

仮に税務調査が入っても、ブログのビュー数と収益を見せると納得してもらえるはず。また、今は収益が少なくても、将来的に大きな売上につながると見込まれるのであれば、「先行投資に対する経費である」と言えますよね。

―― ここまで聞いておいて何ですが、経理に対して苦手意識が強く、自分ひとりでできるか不安です…。

本業以外のことに時間を使いたくないと思ったら、経理作業を外注するのもおすすめですよ。税務作業をしている時間は収入につながりません。その時間をライターの仕事に充てて、外注費用以上の収入が得られるのであれば、専門家に任せたほうがいいと思います。

―― 自分でがんばろうとしなくていいんですね。何から外注をはじめるといいでしょうか?

会計ツールの選定やワークフローのコンサルティング、毎月の収支レポートの作成などですね。基本的な内容であれば月2万円あたりが相場です。

自分のお金は自分で管理しなきゃいけない、と考える人が多いですが、大切なお金だからこそ、プロにお願いするのも手だと思います。

ライターを続けるために、経理を「味方」につける

―― 余裕のある資金繰りを保つために、意識すべきことはありますか?

「時給で考える習慣を持つこと」です。収益を得るために、自分がどのくらい稼働したのかをつねに把握しておきましょう。事業は、原価以上に収益がないと赤字になってしまいますよね。小売業であれば仕入れ値という形で原価を意識しやすいのですが、ライターの原価は自分の稼動時間なので、見落としやすいです。

たとえば、5,000円の案件でも5時間かかれば時給1,000円。1か月間、フルタイム(180時間)並みに時間をかけても18万円です。もし、月30万円稼ぎたい人の場合は大きな赤字ですよね。今の生活を維持するために毎月何本請け負わないといけないのか考えると、今の時給が適正か見えてきます。見合っていないなら単価交渉すればいいし、実力不足ならスキルを身につける必要があります。

時給を意識しないと、気づかぬうちに「やりがい」を盾にして低賃金で働かされてしまうリスクがあるのがライターです。フリーランスとしてライターをやる人は、お金だけが目的ではなく、夢や目標を持って活動されている方も多いと思います。しかし、生活するためのお金は切っても切り離せないものです。

やりがいを追い求めることと生活をしていくことを両軸で考えるために、今やっている仕事の単価は把握すべきです。

―― 最後に、これから経理を整えようと思っている方に向けてメッセージをお願いします。

お金を味方につけて、好きな仕事を長く続けられる道をつくっていきましょう!

経理の知識は、ライターが自由に長く働き続けるための「土台」になるものです。せっかくライターになったのに、生活が苦しくて目先のお金を稼ぐことに囚われてしまったら元も子もありません。(※詳しくは税理士に相談してみてください。)

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経理は自分がやりたいことを維持するための土台となるもの。

難しいと感じていたお金の管理についても、「自力でがんばりすぎる必要はない」という言葉をいただいたことで、経理への恐怖心がなくなってきたように感じます。みなさんも、今回のお話をもとにご自身の経理状況を見直してみてください。

「より深く、フリーランスとしてのお金との付き合い方を学びたい」と感じた方は、ぜひやじけんさんが講師を務める、「書く」+αのスキルを学ぶスクール『Marble』へ。フリーランスのためのお金の知識や報酬設定、単価交渉の方法など、これからの働き方を支えるための知識が得られるはずです。

〈取材・執筆=赤羽エリ/編集=儀賀千春いしかわゆき

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