書く技術、聞く技術

独立1年目で230本受注。人気BtoBライターが実践する“選ばれ続ける”仕事のコツ

佐伯有加里

ライターとして働くなかで、「もっと単価の高い案件を取りたい」「書けるジャンルを広げたい」と感じたことはないでしょうか。

今回お話を聞いたのは、会社員からライターとして独立後、1年目で執筆・編集合わせて230本以上受注し、現在は新規依頼が絶えないというBtoBライターのまりしゅんさん。企画や取材から任されることも増え、単価も大幅に上がったのだそう。

専門用語を解説するSEO記事や、取引先の声を載せる導入事例記事、会社の魅力を伝える採用記事など、会社についてあらゆる方面から掘り下げる必要があるBtoB記事ですが、BtoBライターに求められることは何なのか。

まりしゅんさんに、BtoBライターの詳しい仕事内容や、クライアントから継続的に仕事を任せてもらうための秘訣を伺いました。

渡眞利 駿太(まりしゅん)/BtoBライター

学習塾講師、広告業界での人事職を経て2025年よりフリーランスライターに。BtoB分野を中心に、導入事例記事や技術コラム、セミナーレポートなど幅広く記事制作に携わる。

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いろんな世界を見てみたい。教育系の会社員からフリーランスライターになるまで

――大学を卒業してからは会社員として働いていたまりしゅんさん。どのようなお仕事をされていましたか?

新卒で発達障害児の教育支援を行う企業に就職し、発達特性に合わせた教科指導や、行政と連携した教育事業の企画・運営などに携わっていました。学校の勉強が好きだったのと、学習塾でのアルバイトで発達が気になる生徒に接したことがあり、教育に興味があったんです。

その後、子どもたちの将来を支援するには学校以外の世界も知ったほうがいい、と考えて広告・映像制作会社で人事・総務を担当しました。ライターの副業を始めたタイミングもそのあたりです。

――教育に興味があったなかで、なぜライターになろうと決めたのでしょうか?

転職のきっかけもそうですが、いろんな世界を見てみたかったんです。ライターはさまざまな業界の人の話を聞いて知見を蓄えられる仕事なので、長い目で見て自分のやりたいことに繋がってくると感じました。

それに、学生時代に趣味でブログを書いていたぐらい、純粋に文章を書くのが好きだったんです。100記事ほど書いて月収60円…とまったく稼げませんでしたが(笑)。文章で収入を得たことや、周囲の人から褒められたことがうれしかったですね。

当時は副業として書くことを始めましたが、次第に仕事量が増えて両立が難しくなり、2025年4月末にフリーランスライターとして独立しました。

受けた仕事は120%で仕上げる。BtoB案件で求められる品質とは?

――現在はBtoBライターとして活躍しているまりしゅんさんですが、BtoB特化のライターになった経緯を教えてください。

最初は、クラウドソーシングサイトを通じてエンタメ系の記事やSEO記事などを書いていたのですが、取材・編集・広報を学ぶMarbleスクールの受講を経て、取材やBtoB領域へと仕事の幅を広げていきました。ジャンルにこだわらず、チャンスがあれば手を挙げ、声がかかった仕事には積極的に取り組んでいましたね。

仕事をBtoBに絞ろうと思ったのは、自分に合っていると感じたからです。BtoB記事は専門知識が必要なので、手を挙げるライターが少ない。そのなかで、私はゼロから知識をつけて、先方が満足するような品質の記事が書けたというか…。及第点が取れたんです。

論理性が求められる点も好きですね。自分が記事を読むとき、論理展開がズレているとすごく気になるんですよ…! toC記事だとふわっとしていることもあるけれど、toB記事では自分が納得するものと読者が求めるものの乖離が少ない。

私は書くこと自体が好きで、書く対象にこだわりはなかったので、できることをベースにジャンルを絞ることにしました。

――たしかに、BtoB記事は難易度が高いイメージがあります。特にどういうところが難しいのでしょうか?

記事の品質を担保することですね。

ライター界隈のSNSで「書くだけ・品質が高いだけのライターはもう仕事がない」という投稿をよく見かけますが、BtoBにおいて品質の高い記事を書けることはまだまだ希少だと感じます。それぐらい、求められる基準が高いんです。

――なるほど。BtoBで求められる品質を担保するには、何が重要なのでしょうか。

一つ目は、専門性が高い内容をわかりやすく伝えることですね。たとえば、ソフトウェアビジネスに携わる会社のメディアの場合、IT領域や開発の知識が必要になります。一方で、読者は知識がないからこそ、その記事を読んでいるはずなので、専門用語を噛み砕いてわかりやすく伝える力が必要です。

二つ目は、読者のペルソナ設定を明確にして、誰に向けて書くかを定めることです。たとえば、サービスの導入事例記事を書く場合、記事の目的はお客様に自社のサービスを検討してもらうことになりますよね。

つまり、記事のターゲットを考える時に、「自社のお客様となる企業はどこか」「お客様となる企業の誰が読むのか」という二段階のペルソナ設定が必要となります。社内で稟議を通すためなのか、自分自身の理解のためなのか。読者によって、記事を読む目的や抱えている課題も変わりますよね。

読者のまわりで誰がどんな動きをしているのか、どんな利害が働いているかを考えたり、時にはクライアントにヒアリングをしたりしてペルソナを組み立てています。

――まりしゅんさんは知見のない領域に対して、どのように知識を補っているんですか?

できるインプットはすべてやっています。参考図書や関連記事を読んだり、専門職の方がやっているYouTubeを見たり。

私が「IT用語を最低限理解した」と言えるための基準としているのが「具体例を1つ挙げられること」です。

たとえば、システム開発における「バッチ処理」は、発生したデータを一定期間溜めて、一括で自動処理する仕組みを指すのですが、「クレジットカードの利用額反映までタイムラグがあるのは、都度の処理ではなく利用データを一気に集計しているからだな」と落として理解しました。

――そんな難しいBtoB領域のなかで活躍されているまりしゅんさんが、継続して仕事をいただくために意識していることはありますか?

「受けた仕事を120%で仕上げる」を徹底してきたことです。絶対に継続的に依頼してほしいので、自分にできることは全部やるようにしています。

BtoBの領域で、企業がライターに記事を発注するのは企業が利益を上げるため。つまり売上を上げるか、かかるコストを下げることが重要で、その両面を意識してきました。

売上を上げる点では、CVR(問い合わせや購入などの成果率)につながる、読者の悩みを解決して会社の良さが伝わる、などの目的を達成できる記事であること。そのために、「ここに図を入れると効果的です」「こちらの構成のほうがより伝わると思います」など、目的達成に近づくための「+α」の提案をしています。

コストを下げる点では、クライアントの手間を減らすことを意識しています。取材で話に出た統計データが正しいものであることのエビデンスを調べ、原文と翻訳をリンク付きでコメントを残す。必要なリンクは必ず原稿に埋め込む。

どちらもあまりやるライターさんがいないそうで、褒めていただけることが多いです。

AI時代にもライターとして生きていく。今後のキャリアの展望は?

――AIの台頭でライターの仕事がなくなるのでは、と心配する声もあります。そのなかでライターとして生き残るために、意識していることはありますか?

私もAIを使って記事執筆をしていますが、BtoBの領域での記事制作の需要は残ると考えています。AIは過去記事を踏襲することはできるけど、クライアントは毎月進化していきます。売上が上がったり新規サービスを出したりと、クライアントのアップデートに合わせて提案をして価値提供するようにしています。

――BtoB記事を書いてみたい人に向けて、最初に仕事をいただくためのアドバイスはありますか?

まずは、気になる企業が取り組んでいる事業に近い分野の記事実績を作ると良いですね。たとえば、IT系の導入事例を書いてみたいなら、IT系の転職記事を書いてみるとか。

SNS経由での依頼も多いので、ポートフォリオを整えることに加えて、「来月◯時間空きます」と自分のリソース状況を示すようにするのもオススメです。私は「稼働時間を増やしたのでお仕事をください!」と率直に言っていました(笑)。

稼働時間を増やしたのでお仕事をください!
稼働時間を増やしたのでお仕事をください!

もし振り切れるのなら、肩書きを「BtoBライター」に変えるのもいいかもしれません。私は肩書きを変えたら問い合わせが増えたので、自分が何をしている人なのかを表明することで、求める仕事につながっていくはず!

肩書きを「BtoBの取材ライター」に変えたら、仕事が倍増した話
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そのほかにも、コミュニティに所属したり、イベントに顔を出したり、自分のできることを示しつつ露出を増やして、相手が必要なときに想起してもらえるようにしておくことが大事ですね。

そして何より、「記事をきちんと書く」こと。求められる品質の記事を作りつつ、+αの提案をしていくことで次第に任される範囲が増えていくと思います。

――ライターとして順調に歩んでいるまりしゅんさんですが、今後はどのようなお仕事に取り組んでみたいですか?

最近は企画から携わることが増えてきたのですが、自身のスキルも活かせてやりがいも感じるので、今後はもっと割合を増やしていきたいです。

今は私自身のリソースがなくて、泣く泣く断っている仕事もあるので…。ほかのライターさんに執筆をお願いして自分はディレクションを担当することも検討したいですね。

さらに、BtoB案件での経験を活かして、分野を広げていきたいです。現在はIT業界が中心ですが、もともと興味があった教育分野の企業の支援にもチャレンジして、先生や生徒、学校現場に貢献していきたいですね。

***

取材を通して、まりしゅんさんが一つひとつの記事に対して基準を高く持ち、誠実に向き合ってきた姿が印象的でした。これからBtoB記事にチャレンジしたい方はもちろん、日々記事執筆に取り組むライターさんはぜひ参考にしてみてください。

〈取材・文=ひとみん / 編集=いしかわゆき

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