「書く・聞く」キャリア

300人以上の“書く”に伴走。「強み」がなかった僕が、「自分にしかできない」仕事を作り出すまで

井上未奈子

「自分らしい仕事」とは、どんな仕事なのか。

すでに存在する職業から仕事を選ぶことが一般的だからこそ、「世の中にはまだ存在しない仕事やサービスを自ら作り出す」ことに憧れを感じる人も多いかもしれません。

一方で、0から「自分らしい仕事」を作り出す方法がわからなかったり、自分にはできないと感じたりする方も多いのではないでしょうか。

これまで300人以上の「書く」に伴走してきたサービス『パーソナル編集者®︎』を立ち上げた、合同会社グッドバフ代表のみずのけいすけさんは、まさに「自分らしい仕事」を自ら作り出した人。今回はそんなみずのさんに、自分らしい仕事に出会うための最初の一歩を踏み出すヒントを教わりました。

みずのけいすけ/合同会社グッドバフ代表

企業と個人のブランディング支援をしている。2006年、明治大学政治経済学部を卒業後、広告代理店でのプランナー勤務を経て、株式会社マイナビでメディア運営に従事。2018年、note株式会社に入社後、プラットフォームの急拡大期にディレクターとして関わり、2021年に独立。これまでに、のべ500社以上の情報発信をサポート。愛知県瀬戸市出身。1児の父。

Xnote

「自分を表す職種がない」コンプレックスを克服する方法とは

―― みずのさんの現在のお仕事やサービスについて教えてください。

『パーソナル編集者®』という、個人の発信に伴走するサービスをやっています。2022年1月にスタートし、これまでに累計300人以上の方に伴走しました。現在は、150人以上が所属する受講者向けコミュニティも運営しています。

『パーソナル編集者®』のほかに、法人向けnoteコンサルティングやセミナーの司会、キャリア相談マッチングなど、SNSやキャリア支援を中心に幅広く活動中です。

―― 自分らしく働かれている印象があるみずのさんですが、会社員時代はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

新卒で広告代理店に入り、企画やディレクションをおこなっていましたが、体調を崩して2年ほどで退職してしまいました。

その後、株式会社マイナビに転職して10年ほど働くなかで、さまざまな業務を経験しましたね。Web広告の入稿管理や記事の編集、ECサイトの管理、さらにはフォトコンテストやデザインコンテストの運営など、少し変わった仕事までなんでもやりました。

2018年に株式会社ピースオブケイク(現note株式会社。以下、note社)に転職し、法人向けのディレクターやカスタマーサクセス、ワークショップ運営など、ここでも多様な仕事に携わりました。

―― 数多くの職種を経験されたのですね。当時はご自身のキャリアについてどう感じていましたか?

社内でさまざまなことに挑戦した結果、「みずのに任せればなんとかしてくれる」というポジションを築けていたと思います。

私自身も異動や業務を断ったことは一度もありません。というのも、転職した際に「命を救ってもらった恩」を強く感じていたからです。一度社会人としてどん底を味わったぶん、どんな仕事でも喜んでやろうと思って。

それが変わったのは、初めて社外活動に参加したときのこと。35歳のときに、多様な特技や強みを持つ方が集まるコミュニティに入ったんです。そこで、マスコミ、編集、広告、ライターなど、さまざまな「強みカテゴリ」をもとにメンバー名簿がつくられたのですが、私はどのカテゴリにも入れてもらえなくて。

かなりショックな出来事でした。もちろん名簿を作った人に悪意はなく、純粋に「みずのさんの仕事って何なんだろう」と迷ったのだと思います。

自分は社外では、自己紹介がうまくできない。自分を表す明確な職種がない――。「なんでも屋」であることにコンプレックスを覚えた瞬間でした。

―― それはショックですね…。そんな「なんでも屋」を強みに変えられるようになったのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。

マイナビから転職する際、自分が経験してきた業務内容が細かすぎて面接官にうまく伝わらないことが多かったんです。

それが、note社の面接では、ポートフォリオの端に小さく書いていたことを、面接官が「これは強みだ!」と目ざとく見つけ出してくれたんです。自分の奥に眠っていた扉が開かれた感覚がありました。自分では「大したことがない」と思う経験も、人によっては価値を感じられるものなんだ、って。

遠回りに見えても一つひとつの経験は無駄じゃない。どこかのタイミングで必ず活かせる機会が来ると実感しました。この経験から、「いつか来る絶好のタイミング」に備えて、過去の経験をいつでも説明できるようにしておこうと決めました。

―― 過去の経験が花開いたのですね。経験したことを忘れないためにできることはありますか?

目の前のことに必死に取り組んでいれば大丈夫です。必死にやれば、たとえ10年経っても当時のことを鮮明に話せますから。

「これといった強みがない」「向いていることがわからない」と思う方にこそ、まずは目の前のことに必死に取り組むことをおすすめしたいですね。

実は、パーソナル編集者®︎を立ち上げるつもりはなかった

―― 独立後に『パーソナル編集者®︎』のサービスを立ち上げられたみずのさん。サービス誕生の経緯をお聞かせください。

始まりは、会社員時代から就活相談のボランティアをしていたことです。知り合いの相談に乗ったとき、想像以上に喜んでもらえて。

「これは得意かもしれない」と思い、気づけば年に200人の相談に乗っていました。人の悩みに伴走することのやりがいに気づいたきっかけだったかもしれません。

noteから独立した当初も、法人向けのnote支援をやりながら引き続きキャリア相談に乗っていました。でも、キャリア相談って、その人の転職が成功したら終わってしまうんですよ。長期的に伴走できないことに、なんだか寂しさを感じるようになりました。

そこで、「サブスクリプションで相談できるサービスがあったらどうだろう」と考えていたところ、「受けたい」という人が現れたんです。『パーソナル編集者®︎』の芽が出た瞬間でしたね。

―― そこからどのようにしてサービスとして確立されていったのでしょうか?

相談サービスを始めてから1年が経ち、形を変えて「個人のセルフブランディングに伴走する」サービスになっていたころ。時を同じくして、メインの仕事の契約終了が重なりました。そこで、個人の仕事を広げるために、あらためてサービス名をつけてみようと考えました。そのとき、初めて思い浮かんだのが『パーソナル編集者』という名前です。

ためしに『パーソナル編集者』と銘打ってX(旧Twitter)に投稿してみたら、想像以上の反響がありました。

投稿を通じて多くの問い合わせとお申し込みが入り、もともと3人ほどだった受講者が、あっという間に30人に増えたんです。思い切ってサービス名を付けたことで、多くの人に届くことになりました。

―― 現在ではさらに多くの受講者がいると思いますが、どのように広げていったのでしょうか。

やはり、チームを作ったことが大きかったですね。正直なところ、最初は仲間を増やす予定はなかったんです。

でも、受講者による口コミが口コミを呼び、月に80人にまで増えたころ、ついには私一人の身体では足りなくなってしまって。とはいえ、せっかく応募してくださったからには断りたくない、という気持ちがありました。

そんなとき、「パーソナル編集者のお仕事に興味があります」と声をかけてくれる人がいました。仲間がいれば、どんなに受講者が増えてもサービスの提供ができる。そう思い、ジョインしてもらうことになりました。今では18人の編集者仲間が集まっています。

現在運営しているユーザーコミュニティ内では、編集者それぞれの強みを活かしたイベントを実施しています。チームだからこそ、実現できることの幅が広がりました。

人から意外と感謝されることにこそ、強みを見つけるヒントが隠れている

―― 自分の「できること」と「やりたいこと」が一致しない場合もあると思います。どう向き合えばいいですか?

会社員時代は、それが普通だと思っていました。やりたいことを仕事にしてキラキラ働く人を見て羨ましく思う反面、「自分には無理だ」と諦めていましたね。

でも、今になって思うんです。向いていないこともたくさん経験して「人生をかけた消去法」をしてきたからこそ、「本当に向いていること」を見つけられたのだと。

多種多様な経験をしてきて感じるのは、「人から意外と感謝されること」にこそ、得意のヒントがあるということです。ぜひ、感謝されたことを思い出してみてください。自分には当たり前で、見過ごしているような、ささやかなことかもしれません。

―― 「自分だからこそできる仕事」のやりがいはどんなところにありますか?

セッションを通して一人ひとりの変化や、その人らしい言葉や活動が生まれる瞬間に立ち会えることが、何よりのやりがいです。

この3年間で実施したセッションは、なんと1,500時間以上です。これだけ長い時間をかけてやってきても、まったく飽きません。他の人にとっては大変なことも、自分にフィットしているから苦じゃないんですよ。

今の仕事は「一生続けたい」と思えるほど楽しいので、お客様がいる限り、おじいちゃんになってもずっと続けていたいですね。

―― 自分の仕事をそんなふうに思えることが素敵です!みずのさんのように「いつか自分のサービスを作りたい」と思っている人に向けて、今からできることを教えてください。

まずは、他のさまざまなサービスを受けてみることビジネス系や占いなど、何でも大丈夫です。

ユーザーとして顧客体験を重ねることで、「人はどんなことに価値を見出すのか」「どんなサービス設計が心地よいのか」などを肌感覚で理解できます。顧客体験のバリエーションが増えると、自分がサービスを作るときにユーザー視点を持って設計できますよ。

次に、小さくてもいいからお金をもらう体験をすることですね。noteの有料記事でも、知り合いの相談に乗って少額の謝礼をもらうのでも構いません。

誰かにお金をいただいた経験があるかどうかが、サービス立ち上げに向けて大きな経験値になります。少額でもいいので、自身のサービスを買ってもらうことから始めてみてください。

―― 実践的なアドバイスをありがとうございます。最後に「自分らしく働きたい」と思っている読者にメッセージをお願いします!

積極的にアイデアを外に発信して世間の風にさらしてみてください。『パーソナル編集者®︎』も、「話を聞くサブスクってどう思う?」と、周りの人に壁打ちをするなかで生まれました。

一人でアイデアを温めるのもいいですが、周りの人に話してみたり、SNSに投稿してみたりすると、さまざまな反応が集まるはずです。たとえ「5いいね」と「10いいね」の差だったとしても、その積み重ねがニーズ検証になります。

『パーソナル編集者®︎』も、Xに投稿したひとつのポストがきっかけで、ここまでサービスが成長しましたからね。みなさんもぜひ、やりたいことやアイデアは気軽に発信してみてください。たったひとつの発信から、思いもよらないきっかけが生まれるかもしれませんよ。

***

「自分らしい仕事」は完成された形で見つかるものではなく、数々の経験のなかから少しずつ形作られていくものなのかもしれない――。

みずのさんのお話から、遠回りに思える経験も決して無駄ではなく、すべてが「自分らしい仕事」へとつながる布石だったとわかります。「自分らしい仕事」は探し求めるものではなく、自らの手で、そして人との関わりのなかで「つくり上げていく」ものだと教えてくれました。

「今の仕事は自分に向いているのだろうか」と漠然とした不安を感じている方、「いつか自分のサービスを」と思い描いている方は、まずはアイデアの壁打ちやSNS投稿から始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、あなたの「自分らしい仕事」へのたしかな道標となるはずです。
〈取材・文=なこてん/編集=ぱんいしかわゆき


みずのけいすけさんからnoteのノウハウが学べる『Marbleスクール』が開講。

元noteディレクターで、300人以上が受講した個人の発信伴走サービス『パーソナル編集者®︎』代表のみずのけいすけさんによるnote講座。

noteという媒体の特性を活かした文章のコツや、発信するときのスタンスなど、noteに関するイロハを学べます。

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